『解説者の流儀』戸田和幸 著

 サッカーはアメフトと違い、プレーがなかなか止まらず流動的で、リプレー映像も少なく、一見シンプルなように見える動きの裏にある戦術がうまく伝わってこない。しかし戸田さんの解説を聞いた時には衝撃を受けた。言葉だけで説明しているのに非常にわかりやすいのだ。90分間ほとんど「解説」をしないのに解説者として放送に呼ばれている人が中にはいるが、本当にあれで良いと思っているのだろうか?

.戸田さんの考えは?

 サッカーは個人競技ではなく団体競技なので、バラバラの選手をまとめる為の軸となる戦術が必ず存在するはずだ。これはどんな団体スポーツにも言えることであると思う。トップレベルチームになればなおさら複雑であるはずだ。選手達も意図を持って動いているはず。そういったことをサッカー素人の私は知りたい。その痒いところを掻いてくれるのが戸田さんである。

 段々と戸田さんの思考回路に興味を持つようになり、戸田さんはどんなことを考えて解説に取り組んでいるのか、何を考えているのかなどを知りたくなり本書を手に取った。わざわざ日本から取り寄せてみたが、結果は満足のいくものであった。基本的な内容は、トピックごとに戸田さんの考えを知ることができるものとなっている。戸田さんにとっての「解説者」とは何なのか?解説者としての苦悩や楽しさ、視聴者に何を届けたいのかについて知ることができた。現役時代に付いて書かれている章では、半自伝的な印象を受けた。

.メディアへの苦言

 一貫して感じたことは、戸田さんが現状の日本メディアが切り取るサッカー観に疑問を呈していることである。日本のメディアは、ロジックよりもキーワードやスターを好む傾向にあると説いている。もちろん地上波と、お金を払う専門チャンネルとでは視聴者層が違うため、それぞれにあった解説レベルを変えていかなければいけないのも分かる。しかし、サッカーの楽しさを語る上で戦術は外せないものだと思う。

 戸田さん曰く、解説の仕事は「言語化すること」と述べられている。チームの考え、ゲームプラン、攻守の狙い、プレイヤーの特徴、役割、試合の中での両チームの移り変わりといった部分を言語化してくれる解説は、サッカーのことをあまり知らないが、何故そうなるるのかと気になってしまう私が欲している解説である。選手のバックストーリーなどはどうでもいい。フィールドで起きていることを知りたいのである。なのでもっと戸田さんのような解説が増えることを切実に願う。

.アメフトから学べること

 サッカーはアメフトと比べると、まだ幸せである。日本語のコンテンツがたくさんあるからだ。本屋に行けばサッカーについて学べる本がたくさんある。それに対してアメフトは日本語コンテンツが少ない。本屋でアメフトに関する本を探すと、ラグビーと一緒にされていることがしばしばある。雑誌もかつて存在したが今はない。高度な戦術について語る本なども存在しないのだ。なので解説のレベルも本国と比べるとどうしても劣ってしまう。

 私は、そんな恵まれているサッカーもアメフトから学べることがあると思っている。それは画面上の線や記号を使ったリアルタイム解説である。サッカーというスポーツの特徴上、プレーが止まることが少ないためリアルタイムでリプレー映像を使って解説するのは難しいだろう。それでも、ハーフタイムや試合終了後にレビューの時間があっても良いと思う。その際にもっと線を書き込んで解説してくれても良いと思う。もちろんしている試合もあるかもしれない。しかしそれをベーシックにしてくれればもっとサッカーの楽しさが伝わると思う。この試合後の戦術レビュー時間を作ることは、戸田さんも提言していることであった。 

.知った気にならない

 最後に戸田さんの「知った気にならない」という言葉について語りたいと思う。これはどんなことにも言えることである。私はアメフトの勉強をしていて多少知っている情報が多い自覚はあるが、全てを知っているとは思っていない。何かに詳しいと思った時点でその先に成長はないと思っている。今後も知った気にならずに色々なことの知見を増やしていきたいと思う。

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