仄暗いフィンランドの底から#11「学校」

 長かった。ようやくLähihoitaja(総合福祉資格)の学校への入学が決まった。今通っている語学学校には1年と3ヶ月程通った。初めてこれほど多国籍な環境で勉強をしたが、文化の違いに驚かされることが度々あった。遅刻はあたりまえ、宿題はやらない、授業に集中しない、数え上げたらきりがないほどやる気を削がれる環境であった。ようやく嫌いなクラスメイトから解放されると思うと幸せでいっぱいである。

 私は移住する際にこの資格を取ることを大まかに考えて5カ年計画を立てていた。

1年目(2019年7月まで):フィンランド語の勉強

2年目(2020年7月まで):専門学校

3年目(2021年7月まで):専門学校

4年目(2022年7月まで):専門学校

5年目(2023年7月まで):就職

 移住したのは2018年8月。当初の計画では数ヶ月で語学学校に通い始めれると予測していたが、結局始まったのは2018年の大晦日であった。今後は2年半の間、総合福祉資格の勉強をする。終わるのは2022年内だろう。その後順調に就職できれば計画通りとなる見込みだ。

 そもそもなぜこの資格なのかというと、もうデスクワークはやりたくないからだ。パソコンと一日中にらめっこする仕事は私には合わないと日本で働いている時に思った。仕事は日々私を成長させてくれたし、同僚も素晴らしい人が多く、職場に行くのも楽しかった。しかしやりがいを感じることができなかった。幸せではなかった。もちろん仕事をしているわけだから誰かの役には立っていたはずだが、その誰かがしっかりと見えてこなかった。私は誰かを直接助ける仕事をしたかった。

 フィンランドに引っ越すことはキャリアチェンジのチャンスだった。武器もキャリアも無い状態で来たフィンランド。若さという時間を味方にしてフィンランド語と専門資格という武器の獲得に時間を使ってみることにした。精神衛生上この二つを手に入れれば不安に押しつぶされることも減ると思った。異国に住むのならなおさらな気がする。

 人材不足業界という点も、この職種を選んだきっかけでもある。フィンランドで人が足りていない業界はITとヘルスケアだと語学学校の就職専門家から聞き、介護業界に興味を持った。ITを学べばフィンランド以外でも仕事があるだろうが、ずーっと座ってパソコンとにらめっこするのはもうこりごりだ。そもそもそこまで興味も湧かないから勉強も長続きしないだろう。

 私は去年、介護施設で3週間のインターンをした。嬉しいことにそこには活躍する移民がいた。ご老人が話すフィンランド語は優しく、いつも癒された。彼らはゆっくり生きている。介護職員もゆっくり働いていた。この施設は人員が足りていたからだろう。この3週間を経て、私はこの業界に足を踏み入れたいと確信した。彼らが余生を幸せに過ごせるようにサポートをしたいと思えた。

 夏至祭の日、90歳以上のおばあちゃんが久しぶりにシナモンロールを食べさせてもらっていた。美味しい美味しいと言いながら食べていた。あのおばあちゃんの笑顔を見ると、自然と私も笑顔になっていた。

 しっかりと勉強して、またあの瞬間に巡り会いたいと思う。

おわり

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